三宅村火山ガスに対する安全確保に関する条例


平成19年1月23日
条例第12号


三宅村民は、平成12年6月に始まった三宅島の火山活動により、同年9月に住み慣れた故郷を離れ、4年以上にわたる長期の避難生活を余儀なくされた。 現在、三宅島の火山活動は、全体としてゆっくりと低下しているが、終息には至っておらず、火山ガスの放出は依然として続いている。また、二酸化硫黄濃度については、環境基本法で定める環境基準を達成していない。 このように村民の健康を必ずしも保証できるレベルとは言えない状況の下で、三宅村は、平成16年7月、「火山ガスとの共生」を基本に、避難指示を解除し、村民の帰島を可能とする方針を決定した。 「火山ガスとの共生」には、村民が火山ガスのリスクを受容し、自らの安全を守るのは自分自身であることを自覚して、リスクを最小限に抑えること及び行政が住民の安全確保のための対策を確実に実施することが必要である。 そのためには、村民一人ひとりが自らの安全を確保するために主体的に取り組む「自助」及び村民相互が助け合い、協力しあう「共助」を基に、三宅村が村民の安全を確保するための施策を実施する「公助」を行うことになる。 この条例は、村民一人ひとりが、火山ガスの危険性を十分に認識し、安全確保のためのルールを確実に守っていくことが必要不可欠であることから、火山ガスに対して必要な安全確保のための対策について定めるものである。

(目的)
第1条 この条例は、三宅島で発生している二酸化硫黄の放出が停止するまで又は村長が人の健康に影響を与えることがないと認めるまで、二酸化硫黄から村民の安全を確保するため、三宅村及び村民等の責務を明らかにするとともに、 必要な規制及び措置を定めることを目的とする。

(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
(1) 長期的健康影響基準 三宅村規則(以下「規則」という。)で定める人の健康に長期的な影響を与えるおそれがある二酸化硫黄濃度の基準をいう。
(2) 短期的健康影響基準 規則で定める人の健康に短期的な影響を与えるおそれがある二酸化硫黄濃度の基準をいう。
(3) 高感受性者 ぜん息等呼吸器疾患又は循環器疾患を有する者、新生児、乳児、妊婦等若しくは三宅村が実施する帰島前健康診断又は帰島後の健康診断において、二酸化硫黄に対する感受性が高く、比較的低濃度で影響を受けやすいと判定された者をいう。
(4) 定点観測点 二酸化硫黄濃度を常時観測する規則で定める地点をいう。
(5) 村民 三宅村に住民登録をしている者及び外国人登録をしている者をいう。
(6) 村民等 村民及び三宅島に観光等で入島し、滞在する者をいう。
(7) リスクコミュニケーション 三宅村の安全確保のための対策と村民の自発的行動とにより、二酸化硫黄から村民の安全を確保することが可能となることを村民に理解してもらうために、三宅村がリスク情報等を公開することにより行われる村民との対話の機会をいう。

(三宅村の責務)
第3条 三宅村は、村民等の安全確保のために必要な規制及び措置を講ずるほか、二酸化硫黄濃度に関する監視及び観測、緊急情報の伝達並びに緊急時の避難体制を整備する。
2 三宅村は、二酸化硫黄の危険性、安全確保のためにとるべき行動等についてマニュアル等を作成し、村民等に周知するとともに、訓練を実施するものとする。
3 三宅村は、村民とのリスクコミュニケーションの促進に取り組むものとする。
4 三宅村は、村民等に対し、二酸化硫黄に関する知識の普及及び啓発に努める。

(村民等の責務)
第4条 村民等は、二酸化硫黄の危険性について十分理解し、この条例の規定を遵守するとともに、三宅村が行う安全確保のための対策に協力し、三宅村が策定する安全確保のためのマニュアル等に沿った適切な行動をとらなければならない。

(規制区域の設定等)
第5条 三宅村は、二酸化硫黄濃度が長期的健康影響基準を達成していないと認められる地域について、次の各号に定める区域を設定し、村民等に対し各号に定める制限を課すこととする。
(1) 立入禁止区域 火山活動の監視、観測、学術研究等のため、規則の定めるところにより、あらかじめ登録した者であって、立入りについて村長の許可を得たもの以外の者は、立ち入ることができない。
(2) 危険区域 火山活動の監視、観測及び学術研究、災害復旧等に従事する者であって、規則の定めるところにより、立入りについて村長の許可を得たもの以外の者は、立ち入ることができない。
(3) 高濃度地区 居住することができないとともに、次条第1項第2号アからウまでの者以外の者は、立ち入ることができない。
2 前項各号に掲げる区域の範囲については、規則の定めるところにより、村長が設定する。この場合において、あらかじめ議会の議決を経なければならない。
3 前項前段の規定による設定をした場合にあっては、村長は、これを公示するとともに、当該設定に係る区域の範囲を明示するための標識等を設置する。 4 村長が第2項の区域の範囲を変更する必要があると認める場合には、第8条に規定する三宅村安全確保対策専門家会議の意見を聴いた上で、当該区域の範囲を変更するものとする。
5 第2項及び第3項の規定は、前項の区域の範囲を変更する場合について準用する。

(村長の指示等)
第6条 村長は、次の各号のいずれかに該当する者に対して、前条第1項に規定する区域から退去させる等の必要な指示をすることができる。
(1) 村長の許可を得ることなく前条第1項第1号及び第2号に規定する区域に立ち入った者及び同項第3号に規定する区域に居住した者
(2) 次に掲げる者を除き、前条第1項第3号に規定する区域に立ち入った者並びにあらかじめ行った村長への届出及び村長の許可の内容に反した者
ア 船舶への乗船及び船舶からの下船、航空機(ヘリコプターを含む)への搭乗及び降機、郵便物及び宅配便の配送、自動車等に乗車しての三宅島の区域内の移動等村民等が三宅島に入島し、及び離島する行為並びにこれに付随する行為のうち必要かつ不可欠なもの並びに村民が生活する上で欠くことのできない行為にあっては、当該行為を行うのに必要最小限の時間内で行う者
イ 村民等が行う農地及び樹木の管理、住宅の保全及び修繕等の行為(ウに掲げるものを除く。)を1日当たり4時間以下で必要最小限の時間内で行う場合であって、規則の定めるところにより村長に届け出た者(高感受性者を除く。)
ウ 村長が規則で定める二酸化硫黄に対する安全対策を講じた場合において、気象庁等が行う火山活動の監視、観測及び学術研究、三宅村が行う二酸化硫黄濃度の監視及び情報の伝達、災害復旧及び災害復興に係る工事、都道、村道等の維持管理、農業協同組合等が組織的に行う農地及び樹木の管理、漁業協同組合等が組織的に行う潜水漁業及び漁獲漁業の操業、職工組合等が組織的に行う住宅の保全及び修繕、船客待合所において商工組合等が組織的に行う物販の行為にあっては、当該行為を行うのに必要最小限の時間内で行う場合であって、規則の定めるところにより村長の許可を受けた者(高感受性者を除く。)
2 前項第2号アからウまでに規定する者にあっては、村長は、二酸化硫黄からの村民等の安全を確保するために必要な限度において、二酸化硫黄濃度を緩和する機能を有するマスクの装着その他の規則で定める必要な行為を義務付けることとする。

(注意報及び警報の発令)
第7条 村長は、二酸化硫黄濃度が短期的健康影響基準を超えるときは、規則に定めるところにより、二酸化硫黄濃度の段階に応じた注意報及び警報を発令するものとする。 2 前項の場合において、村民等は規則で定める二酸化硫黄濃度の段階に応じた行動基準を遵守しなければならない。

(三宅村安全確保対策専門家会議の設置)
第8条 二酸化硫黄の危険性から村民等の安全を確保するために、必要な事項を調査し、検討するとともに、村長に意見を述べるため、規則で定めるところにより、三宅村安全確保対策専門家会議を設置する。

(過料)
第9条 正当な理由なく第6条の村長の指示に従わなかった者は、5万円以下の過料を科することができる。

附則
(施行日時)
1 この条例は、災害対策基本法(昭和36年法律第223号)第60条第1項に基づく平成12年9月2日における避難のための村長の立ち退きの指示について、同条第4項により当該避難の必要がなくなった旨の村長の公示があった時から施行する。
(みなし規定)
2 前項の規定にかかわらず、この条例の施行前に行った二酸化硫黄が長期的健康影響基準を達成していないとして認められる地域について設定する立入禁止区域、危険区域及び高濃度地区の範囲の設定に係る議会の議決については、この条例施行の際、第5条第2項後段に規定する議会の議決とみなす。
(高濃度地区に関する措置)
3 村長は、平成19年7月から同年8月までの間において、第5条の規定にかかわらず、高濃度地区のうち、阿古高濃度地区に限り、規則で定めるところにより一時的な滞在を許可することができる。
(高濃度地区に関する措置)
4 村長は、平成20年3月から同年8月までの間において、第5条の規定にかかわらず、高濃度地区のうち、阿古高濃度地区に限り、規則で定めるところにより一時的な滞在を許可することができる。